巻頭特集
焦がす
という
哲学
焙煎士・黒木隆一は、毎朝5時に火をつける。渋谷の路地裏、築45年のビル地下に構えた焙煎室で。
「豆は熱を受けると正直になる。嘘がつけない。」黒木隆一 — 焙煎士・創業者
コーヒー豆は、生の状態では青く青臭い。飲めたものではない。それを口にできる飲み物へと変換するのが焙煎という化学反応だ。メイラード反応、カラメル化、熱分解——百種以上の香気成分が生まれ、消え、また生まれる。
浅煎りが流行した。スペシャルティコーヒーの時代、酸味と明るさが尊ばれた。だがKURO COFFEEは敢えてその潮流に背を向ける。深煎りの中に潜む甘みと複雑さ、余韻の奥行き——それをもっと多くの人に知ってほしいからだ。
「深煎りはシンプルではない」と黒木は言う。「むしろ一番難しい。少しでも間違えれば、ただ苦いだけの炭になる。でもうまくいったとき、豆は会話を始める」
KURO COFFEEのエスプレッソは25秒±2秒で30ml。その窓に命を賭ける。